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妖怪?

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それは珍しくも横島が学校に行った日のこと




「くっそー、何でこんなタイミングで掃除当番にあたっとんや俺はー」


ほうきを持ってぶつくさと愚痴を言っている横島


「何を言ってるのよ、生徒は学校に来るのが本分でしょう。
 だいたい一人じゃないんだから、ましだと思いなさい」


机から伸びている黒髪の女性、ただし上半身のみ―――愛子が忠言を告げる。

彼女の言葉どおり、横島以外にも掃除をしている生徒たちはいる。
普段、学校に来ないやつが何を言ってやがる、といわんばかりに
軽いとはいえ充分に怒気とわかるだけの圧力が込められた視線が、横島に集まっている。



そんな目線から逃れるように、あらぬ方を見ながら、


「しっかし、改めて考えるとこのクラスのやつらもすげーよなー。
 愛子、ピート、タイガー、いつのまにかあっさりと受け入れてんだから。
 あ、別に差別しよーってんじゃないぞ。
 ただ、俺みたいにバイトで慣れてる訳じゃないのに
 自分達と違う存在を受け入れられるってのは
 素直に凄い事だよな、って思ったんだよ」


途中、少々顔を曇らせた愛子へのフォローをいれつつも
横島は前から気になっていた事を言った。
正確に言うならば、感心していた事をふと漏らした、という所だろう。
顔をほころばせて、愛子もその会話に乗る。


「やっぱり、横島君がいるからじゃないの?
 見た目はともかく、やってる事のインパクトは私らよりずっと大きいわよ」

「オイオイ、俺は普通の人間だっての。
 そんなたいした事もやってねーだろ」


横島は相変わらず、自分の行動を自覚していないようである。
まぶしいものでも見るかのように目を細めて、
愛子はへらへらと笑う彼をを見つめていた。





他の生徒たちが含み笑いをしながらそんな二人を見ている。

眼鏡をかけた生徒が、微笑ましい言い合いを続けていた二人に呆れた風に

「何を言っとるんだお前ら。この学校にいる三分の一は妖怪だぞ」










「「・・・・・・・・・・・・はい?」」










横島と愛子が気の抜けたような声を漏らした。


「一応、人間には内緒なんだけどな。
 このクラスに至っては横島とタイガー以外は全員妖怪だし。
 今年から、管理し易いように纏めるようになったらしいぜ。
 勿論、俺もそうだぞ。
 タイガーと横島はGS見習だからじゃないのか?
  しっかし、誰からも聞いてなかったのかー」


想像を遥かに越えた事柄があっさりきっぱりと告げられてゆく。
他の生徒たちの中には、悪戯が成功したといわんばかりの表情を浮かべている者もいる。
混乱する頭をどうにかこうにか落ち着かせた横島は
彼らの正体に関する問答はさておいて、何より気になった事を問い質した。
ちなみに愛子はまだ固まっている。




「ちょ、ちょっと待て!
 進級した時には俺は美神さんとこでバイトしてなかったぞ!」


「ん?
 お前の場合は、あんまり回復力と生命力が人間離れしてたんで
 本人とその家族が妖怪だと気付いてないだけの
 先祖がえりだと思われてたらしーぞ」






そこで話を打ち切り、掃除を再会する眼鏡君。



愛子は呆然と立ち尽くしている。
これは驚愕の真実というヤツなのか、
はたまた、単にからかわれただけなのか。

それはともかくとして
自分がそう思われていたと言われた時、思わず納得してしまった事を
滂沱の涙を流しながら壁に額を打ち付け、横島は必死で否定しまくっていた。