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TAROT

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廻る廻るよ 型無き歯車

誰にも見られず
誰にも聞かれず

狂々狂々(クルクルクルクル)
空々空々(カラカラカラカラ)

全ての始まる音立てて
全ての壊れる音立てて





真理を究めし『魔術師』さえも
気付かぬうちに 
気付けぬうちに
全ての終わりは始まった

『女司祭』の魂探し
一つの願いを叶えん為に
一つの望みを叶えん為に
今日も今日とて狩り続け
空に踊るは三影の姿

『女帝』は黙して身を隠し

『皇帝』は座したままにて時を待つ

『法王』にさえ治める知恵も在りはせず










廻る廻るよ 哀しき歯車

何も語らず
何も示さず

斬々斬々(キリキリキリキリ)
型々型々(カタカタカタカタ)

嘲る軋みをばら撒きながら
弄る歪みを振り撒きながら





魔の一撃に『恋人』達は倒れ伏し
蹂躙されるは世に在る霊都
神すら穿つは『戦車』の咆哮
次第に増え行く魔物が持つは
人の及ばぬ果て無き『力』
失望超えて 至るは絶望

されど『隠者』の登場に
新たに廻りし『運命の車輪』

次なる幕が新たに開く
終わりの時はまだ見えず










廻る廻るよ 儚き歯車

何処とも知れず
何処とも解らず

忌々忌々(キィキィキィキィ)
刈々刈々(カリカリカリカリ)

時間という名の風受けて
現世を未来に変えて行く





『正義』の元に集いし人間
余りに小さき勝利への道
『吊るし人』に似た決意
しかしそれでも諦めはせず

命蝕む『死神』を
打ちはらわんとする為に

『節制』などは叶いもせずに
奇策謀略全てを賭けて
『悪魔』に勝たんと全てを注ぐ
全てを終らさんとして










廻る廻るよ 優しき歯車

訪れたるはしばしの平和
例え僅かな静けさとても
幸せ交じりに心は躍る
例え偽り含みとしても

今この時間に祝福を





魔神と人との争う果てに
神鳴る音にて『塔』は崩れん
容易き終わりに疑念は残れど
訪れたるは平穏の時

『星』降る夜に蝶は踊りて
『月』見て舞うは一人の蛍

『太陽』の落ちる姿を心に刻む
愛しき想いを心に残し
時と共にて深まる絆
愚かと知りつつただ願う
今この時に永遠を――――――――










廻る廻るよ 愚かな歯車

気付かれぬ程に小さな音で
気付き得ぬ程に光亡き場で





闇の奥にて『悪魔』が笑う
夜の底にて静かに笑う
暗き縁にて密かに笑う
深き時にて清かに笑う

平和な時を過ごすは甘き『恋人』達
されど覗くは『死神』の影
宵の闇にて無言で潜むは『隠者』達
捕われたるは『女帝』の魂
『皇帝』は杯を傾け勝利に酔う

『正義』の名など何処にも在らず
ただ控えしは『力』のみ
『戦車』の叫びは消え去れど
それでも廻るが『運命の車輪』

地獄の如くに宴は続く
『節制』などは知りもせず
吹き散らされし命の群れは
あたかも『吊し人』のよう

何も出来ずに踊りは続く
理を受け入れし『法王』とても
世を知り尽くせし『魔術師』とても
己が無力を苦しみながら

狂宴において打ち倒されるは
かつての『女司祭』が一人

夜の空にて 散りばめられし『星』の群れ
瞳に映るは 地平に沈みし『太陽』の様

次第にそれさえ薄らいで
闇の中に仄かな明りを終わりに灯し
最後の姿を見送るは
空に浮びし『月』ばかり










廻る廻るよ 歪な歯車

止める者など誰も無く
止める術など何も無く

全てに等しき終わりに向けて





――――――――――さぁ、『審判』の時は来た


手に治めしは一つの結晶
壊すか否か 救うか否か
迷う時間は許されず
惑う思考も許されず
押し付けたりなど想うも愚か

先に見えるは二つの道
選べる道は一つだけ

痛みを友に 叫びと共に
下すは余りに正しき決断
下した余りに哀しき決断

別れの音が鳴り響く
終りの鐘が鳴り響く









歯車止まりし その跡で



『世界』に立つは『愚者』独り
立ち尽くせども 何も変わらず
奇跡を祈れど 何も叶わず

いかほど時間が過ぎたのか
俯き顔を微かに上げて
しかと未来を瞳に映し
確かな一歩を踏みしめる

時には視線を下へと向けて
時には後ろを振り返り
けれど進むは未だ見ぬ道
己自身に負けぬが為に




全てが終わり『愚者』は消え 
残されたるは『世界』だけ










これにて終わりの話は終わる

これは愚かな道化の噺

終りに臨みし末世の唄

手にしたモノと

零したモノと

両の腕に抱きつつ

それでも生きる人等を見つめ

廻るを止めし歯車は

新たな風を待ち望む