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ハロウィン

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今日は十月三十一日。
今日は何の日?





「トリックオアトリートや、局長はん」

「おやおや、これは怖い猫さんだネ。
 その格好は、もしかして手作りかい?」

「せや、夜なべしてこうちくちくとって何でやねん!
 うちら、そこまで暇やあらへんわ。
 んで、どっち? 別に悪戯でもええで」

「ははは、それは勘弁して欲しいネ。
 丁度、ここにクッキーがあるヨ。
 後で三人で分けたまえ」

「へへっ、毎度おおきに♪」





今日は十月三十一日。
今日はモンスターの集まる日。





「朧さん、トリックオアトリート」

「あらあら、可愛らしいわね。
 その三角帽子と箒からすると、魔女かしら?」

「正解。それで、どっち?」

「うーん、悪戯はされたくないから
 このチョコでどうかしら」

「うん。ありがと」





トリックオアトリート(お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ)
一年のうち今日だけ、街中で交わされる合言葉。
ジャックオーランタンが灯されて
夜の町を、小さく可愛いモンスターが歩き回る。

そう、今日は――――――――――ハロウィン





「皆本ーーーーーーーっ!!!










 トリックアンドトリートーーーーーーーーッ!!!
 (お菓子を寄越せ! 悪戯もするっ!!!)」

「待ていっ!!!!!」










「えー」

「何だその不満そうな顔はっ!!!
 そこの二人も『けちー』とか言ってんじゃないっ!!!」



西洋のお祭りとも言えるハロウィン。
日本ではクリスマスなどに比べて、知名度は低いが
それでも、マイナーという程でもない。
ネットや何やで、いらん知識を調べる事は得意な三人娘。
年に一度のお祭り騒ぎと、子供特有の好奇心が組み合わされば
もう、皆本の力で彼女等を止める事など不可能である。
一日だけの台風とでも思い、通り過ぎるの待とうとしていたのだが



「いーじゃん。減るもんでもあるまいし。
 子供の悪戯くらい可愛いもんだろー」

「減るわっ! 色々とっ!!!
 主に僕の神経が磨り減るっ!!!」



ひらひらと手を振り、笑いながらの薫による言葉に
その絶叫に魂を乗せて、皆本が吠えた。
超度7の子供による悪戯。
はっきり言って、何をされるのか考えたくもない。
よって、皆本も彼女等に渡すお菓子をしっかりと用意していたのだが



「そんな、昨日今日の付き合いやあるまいし。
 神経の一つや二つどうって事はないやろ?」

「・・・・・・・・・今更減る神経ってあるの?」

(こんのクソガキどもはーーーーーーーーーーっ!!!!!)



バベルでお菓子を回収しまくった三人は
最終攻撃目標として、皆本にターゲットロックオン。
夜を待ち、葵のテレポートで部屋に攻め込み、
突然の来訪に目を白黒とする彼に対して、
薫が本日の合言葉(に似たモノ)を叫んだわけだ。



「だいたい君たちは、まだまだ子供なんだから
 こんな遅くまで人の家に入り浸ってないで早く家に
 ・・・・・・・・・話を聞けーーーーーーーーーーーっ!!!!」



沈痛な表情で目を瞑り、人差し指を立てて
くどくどと説教をする皆本だったが
そんな言葉など、彼女等にとっては馬耳東風もいい所。
聞かないどころか、三人揃って彼の寝室へと行く始末。



「おいっ!!!
 いーかげんに――――――――――――っ!!?」



子供等を追いかけて、寝室に踏み込んだ皆本。
そこには――――――――三人のモンスターが居た。










まず、エントリーナンバー1。明石薫(10歳)

カボチャである。
ハロウィンには付き物、ジャックオーランタン。
それは何処からどうみても、カボチャである
そう、カボチャパンツである。
物凄く恥かしそうに、けれど手で隠そうとはせずに。
薄手の上着とカボチャパンツだけを身につけて。
ベッドの上で、いまや遅しと待っている。
最後に一言。
カボチャは食べ物である。



次に、エントリーナンバー2。野上葵(10歳)

猫である。
耳に尻尾に肉球にひげ。
何処からどうみても、眼鏡をかけた猫である。
だが、違う点が一つ・・・・・・・その猫は服を羽織っていた。
否定したかったが、見覚えがあるその服装。
そう、それは皆本のワイシャツだった。
子供の体格に、大人の服。
全身を覆えてはいるのだが、ボタンを一つたりとて止めてない為
動く度に危険なものが見え隠れ。
一瞬覗いた桜色。もしや付けてはいないのか。



ラスト、エントリーナンバー3。三宮紫穂(10歳)

魔女である。
三角帽子に黒マント。手には小さな箒を持って。
それらの内、どれをとっても魔女そのもの。
マントは大きく、すっぽりと体が納まっている。
その中で彼女がどんな格好をしているのか。
想像することしか出来はしない。
全身を覆うマントから、ちらりと覗くは彼女の素肌。
特筆すべきはあと一つ。
靴下だけは履いている。
魔女である。確かに彼女は魔女である。










異界に紛れ込んだ皆本は
躊躇なく回れ右して、全力全身Bダッシュ。
だが、彼の意志に反して体は後へ引っ張られ
寝室の中に、彼が完全に入った途端
ばたりとドアは閉じられて
ぱちんと灯りは消え去った。




だって、今日はハロウィン

これからお菓子と悪戯とを兼ねた

甘い時間の始まりなのだから