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ゆめみるつくえ

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つくえよつくえ つくえさん

皆が大好き つくえさん

あなたのお名前、なんてーの?



「私は愛子よ、愛子でいいわ」



なるほどアイボン



「それ違う」










ねぇねぇ、みんなは知ってるかい?
つくえも夢を見ることを。

みんなと過ごす学校生活。
楽しく素敵な青い春。
でも、夢は夢だと諦めて。
一人でこっそり、つくえを濡らす。
だって自分はつくえの子。
生徒になんか、なれやしない。

けれど、夢見る心は止まず、募る思いは止められず。
ある日、とうとうやっちゃった。





ぺろり、ずるずる、ぱくごくん

生徒を一人、食べちゃった





そいつはまるで、ホラーなムービー。
ところがどっこい、つくえの中で
生徒はしっかり生きている。

一重に溜めた、思いの箍が外れたように
一年ごとに生徒は増えた。一人一人と生徒が増えた。
あれよあれよと思う間に、何時の間にやら三十人。
つくえを除いて三十人。全員まとめて一クラス。
十人十色な生徒たち。そんな彼らの共通点。
理由は色々様々だけど、彼らはみんな学校嫌い。
だから、つくえは皆を食べた。
わざわざ嫌いな場所に居るなら、食べちゃったっていいじゃない。
望む学校ないのなら、望む学校作ればいいよ。

つくえに感化されたのか、もともと素養はあったのか。
食べられちゃった生徒はみんな、クラスの仲間を大事にしてた
先生だけは居ないけど、楽しいクラスはここにある。楽しい学校ここにある



それでも、つくえは満たされない。
何時まで経っても、満たされない。
だって、つくえは嘘つきだから。
醜い醜い、つくえの子。
卑怯で嘘つき、つくえの子。
それでも、つくえは止まれない。



今年も一人、仲間が増えた。
学校サボる、いけない子。
そして今年はもう一人、先生役もやって来た
つくえはちょっぴり喜んだ。
みんなはたくさん喜んだ。
これで授業も出来るって

でもね、つくえは知らなかった。
先生が居て、授業があるなら、放課後だって来ることを。








夢はとうとう終わりを迎え、みんなはもと居た時代へ帰る。
今年の二人は例外として、誰にも記憶は残らない

だってあれは、夢だから。
つくえが見ていた夢だから。
過ごした時間は無いのと同じ。
それなら記憶に残りはしない。

ことが終わって、つくえは望む。
せめて使ってくれること。
涙ながらに頼んだけれど、被害者側は渋い顔。

それでもいいかと、つくえは思う。
一緒にみんなと過ごした時間。
みんなは忘れただろうけど、自分はちゃんと覚えてる





つくえよつくえ、つくえさん。
それでホントにいいのかい?
たとえば例に上げるなら、クラスメイトの高松君。
自分の時代に帰った彼は、ある学校の教師になった。
理想を胸に、教師になった。
それはもちろん、彼だけじゃない。
つくえと一緒に過ごしたみんな、色んな形で学校づとめ。

時代も種族も性別も、全てを越えてみんなは一緒。
たとえ頭じゃ忘れていても、心はちゃんと覚えてる。
たとえ記憶を無くしていても、魂だけは忘れない。

だから叫ぶよ、思いのたけを。
だからね、どうか泣かないで。





「我々は皆、こーゆー生徒を夢見て教師になったんだーっ!」

「妖怪でもかまわんっ! 君は、我々の生徒だーーーーーっ!!!」










ねぇねぇ、みんなは知ってるかい?

つくえも夢を見ることを。

夢を追い、夢に傷付き、そうして最後にゃ、それが夢だったって気付くんだ。

そんな夢の名前は、きっと『青春』って言うんだぜ。