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シロとタマモに横島を

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「ちわーっす」

今日も今日とて、事務所にやって来た横島。

特に仕事があったわけでは無く、純粋に暇だったからなのだが。

遊びに行くにしても先立つものが無く、

街を当ても無く彷徨うくらいならば、と

気心知れた仲である彼女達のいる場所を選択したのである。

部屋にいた女性達それぞれが挨拶を返す。



まず、彼らの雇用主にして横島の飼い主、美神令子

「おはよう、横島君」



次に、横島とは長くの付き合いである元幽霊少女、氷室キヌ

「おはようございます、横島さん」



続けて、おキヌと横島とに命を救われた九尾の狐、タマモ

「おはよ、横島」



最後は、横島を師と慕う人狼少女、犬塚シロ

「おはよーでござる、ご主人様」





―――爽やかに時が凍りついた





部屋に一歩入り込んだ体勢のままで、

蝦蟇のように横島が流している汗を除き

誰も彼もが、何もかもが動きを止めている。



そんな中で唯一、冷静な思考を保っている者がいた。


(そう呼んでいいのは、三人になった時だけってあんだけ言っといたでしょうが!
 
 せっかく他の女を出し抜けたのに、台無しにする気なのあんたは!)


まあ、打開策など思いつかず愚痴っているだけだが。

無論、そんな愚痴を口に出したりはせず、頭で考えているだけである。

それでも苛立ちは収まらず、

口癖になりそうな、いや最近ではすっかり口癖となってしまった単語を

件の少女、タマモは呟いた。



「・・・・・・ばかいぬ」



耳聡く聞きつけ、もはや条件反射で反論するシロ。



「犬とゆーな!そう呼んでいいのはセンセーだけでござる!」





―――そして、時は動き出す










横島は色んな目にあわされながら

事務所に来たことを心底後悔していた。

こんなことなら街に出ときゃよかった、と。