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インダラ

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逃げた

外聞も誇りも、何もかもを投げ捨てて
無様に情けなく、命だけを守るために
ただ生き足掻こうと生き抜こうとして

私は、逃げた






私を狙う人間
私を追う人間
私を狩る人間

戦おうとすれば出来たろう
けれど、私は逃げる事を選んだ
戦いを選べば、先に待つのは敗北だけだったから

まだ傷つけられてはいない
だから全速力で逃げられる
それも時間の問題だろうが





風のように地を駆ける
音の如くに地を走る

中を見通せぬ影が恐ろしく
先を見渡せぬ闇が恐ろしく

追い立てられる気持ちで
追いつかれる恐怖を共に
何もかもを振り切るようにして
私は、風すら越えて逃げ続けた









どれほどに走り続けたか
時間の感覚などとうに薄れ
走っているという自覚する感覚すらも
次第に麻痺し始めた事を認めた時





走る先に――――――――人間の影





咄嗟に方向転換をしようと身を捻るが
逃げるために保ち続けた速度が、それを許さず
巻き込むような形で、無様に私は転倒した
絶望という名の暗黒が心に押し寄せる



けれど、慌てて私を介抱しようとする人間が
見知った男の顔である事を確認し
代わりに、心の中を占めるのは安堵
嗚呼、助かったのだ、と






そっと頭を、彼の胸に預け

生きる喜びと、彼への感謝で胸を満たしながら

私の意識は、闇の中へと落ちていった










「美神さん、こないだ捕獲に失敗してから
 最近、とみに暴走が・・・・・・・」

「インダラちゃんは、ユニコーンさんじゃないのにね~」