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ハイラ

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蒼穹の下で、大勢に囲まれるあなた



顔に笑みを浮かべ、道化るあなたを見て
周囲の人たちは笑いあう
嘲りなど一部も含まれない純粋な笑顔で
ほんの少しの呆れは在ったけれど
朗らかさと暖かさに包まれた、明るい空間

時が経つごとに、一人減り、二人減り
後に残されるのは
あなたと、そしてもう一人





蒼穹に朱がさし始め
黄昏の幕が辺りに満ちる





黄昏の中で、あなたは二人



立ち尽くし、呆然と見つめているあなた
見つめ返す、優しい瞳を持つ女性

震える腕を差し出すあなた
僅かな怯えを滲ませながら、ゆっくりと、ゆっくりと
優しい瞳は何も変わらずあなたを見つめている

触れようとしたその瞬間
刹那の間もおかず消え失せる彼女の姿
そこにいた事が間違いであったかのように
まるで夢幻であったかのように

伸ばした指先は虚空を掻き
後に残されたのは、静かな空間とあなただけ





黄昏が影を帯び始め
夜闇の帳が辺りに降りる





夜闇の底で、あなたは一人



膝を抱えて顔を埋めて、
震えもせずに動きもせずに
ただ涙を流しつづけているあなた
少年の姿となったあなた

弱弱しいその姿を見て
自分の無力さに歯噛みする



私には腕が無い
あなたを抱きとめる事は出来ない

私には指が無い
あなたの涙を拭う事は出来ない

私には声が無い
あなたを慰める事は出来ない



だから



傍に寄り添いながら私は誓う

あなたの傍にいつまでもいよう
あなたの痛みが癒されるその日まで
あなたの苦しみが救われるその日まで

あなたは孤独ではない事を知らせる為に
私は、いつまでもあなたの傍にい続けよう





夜闇が薄く消え始め
白光の刃が辺りを照らす





白く染まる世界の中で
輪郭が薄れてゆくあなた
伴って消えてゆく世界

目覚めの時が近くなっている

私も同じく消えてゆく
あなたと引き離される我が身
それに寂しさを感じながら
あなたの方へ目を向けて
私の心は奪われた





瞳を潤ませたままで、少年の姿のままで

顔を上げ、こちらを見つめ返しながら

優しく強く微笑む、あなたの姿に










「ん・・・・・・何かヘンな夢見た・・・
 ・・・でも、いい夢だったなー何となく」

「おはよ~、横島君~ハイラちゃん~
 よく眠れた~~~?」