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ショウトラ

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人狼の少女は肉が好き
妖狐の少女は油揚げが好き
私は・・・・・・何が好きなんだろう?

自問自答しても、解答は容易に現れない
必ずしも、食事を必要としない身で在るが故に






一つだけ確かなのは
今こうしている時間は
私にとって悪くないという事


噛み砕くのではなく
舐めるか、あるいは甘く噛むだけだが
それでも、味を感じる事はできる

舌を這う肉の感触
歯から感じる肉の弾力
唾液を介した肌の暖かさ
その下で熱く流れている血潮

それら全てが心地よい






ならば、彼が私にとっての好物?

正しくて、けれど間違いの気がする
食べたい、という思いは愛情を表する言葉の一つ
私の胸を占めるこの思いは、きっとそれとは違うもの
狂おしく求めるような、燃え盛りし炎ではなく
ぽかぽかと暖かな、春の日溜りのような思慕










食べてしまいたいのではなく

自分のものにしたいのではなく

ただ――――――――ずっとこうしていたい







・・・・・・・・・と、いけない

ふと浮んだ思いつきに気を取られ
気付かぬうちに、動きを止めてしまったようで
彼から怪訝な視線を向けられている

再び、けれど先よりも丁寧に舌を動かし始めた
彼の顔に苦笑が浮ぶのを見て
私の心は、暖かさに包まれる
繰り返し繰り返し、彼の頬を舐めながら
私はちょっとした祈りを神様に捧げた








言葉に出来ぬ思いが、彼に伝わりますように、と










「むう、犬ってホンマ、顔を舐めるのが好きなんやなー」

「うふふ~、ショウトラちゃんが横島君の事大好きだからよ~」