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クビラ

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彼を観察していた

馬鹿ばっかりやってる彼、自業自得の目に会う彼
セクハラ暴走している彼、余計なこと言ってしばかれる彼

出会った時から変わらない
何も変わらない
いつも変わらない
いつも笑っている

笑っている、彼



なのに、彼の心は
傷ついて、苦しんで、泣いている
そんな時がある事に、気付いた
そんな時も、彼は笑っていた



私には戦う力がほとんどない
彼が再び争いに巻き込まれ、どんな苦境や困難に会ったとしても
それを助ける力はない、私にそんな能力はない

他の皆と比べても
私が一番、戦いには向いてない
戦うことにおいて、私は無力



でも
彼が自分を傷つける
彼が自分の傷を裂く
彼が自分を責め苛む
その時に、気が付けるのは
彼を観てきた、彼を観ている、彼を観続けている、私だけ



今の私に出来る事
私だけが出来る事

彼が痛みを感じた時に
私は彼の傍に寄る
私は彼の体に触れる

彼に触れ合い
気を紛らわせ
内から目をそらさせる
外へと目を向けさせる
傷痕を開かせない為に
苦痛に慣れさせない為に

たとえ少しの間だけでも、たとえ気休めに過ぎなくても

いつものように、今までのように
うわべだけの微笑ではない
心からの笑顔を、彼には浮かべて欲しいから










だから――――――――――今日も私は彼を観る








「俺の上ってそんな居心地いいんかなー」
「クビラちゃんも~、横島君のこと好きだから~♪」




おまけ

「ん、何か他にも見られてるよーな気が・・・」

空を見上げて呟く横島





同時刻、次元を超えた所にある一室で


壁一面を埋め尽くすように存在する無数のモニター
それらのうち、一つの画面に写っている横島
それを苦笑しながら見ている神様が一人



「横島サンって、時々ホントに鋭いのねー」