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夜叉丸

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対峙している男を見据える

かつて敵の一人だった男

ただそれだけの存在でしかなかった男





男は望んだ

強い力を

生き延びる力を





霊力の強さだけなら群を抜いている

霊波刀を、一切の補助も無く具現化できる

その時点で並ではない力の持ち主だ



しかし

哀しいかな戦い方がまるでお粗末にすぎる

霊力の強さに頼りすぎている節がある



また

どれほど、咄嗟の判断力に優れていようと

所詮、奇策は奇策に過ぎない

破られたその時には、余りにも脆い



だから

純粋な力を、揺るぎ得ぬ力を

男は望んだ








そして

男の日常に、私との対決が組み込まれた

強くなるために、生き抜くために








乗り気ではなかった

命令が主のものではなかった事以上に

彼からやる気が感じられなかったから

いつも逃げようとする彼が



対決を続けるうちに、認識は変わって行く

私が変わったわけではなく

彼の行動が変わっただけなのだが

いつしか彼は逃げることを選ばなくなった



劇的な変化ではない

日々を重ねるごとに

ゆっくりと戦いの日々に適応していった

それもまた彼の才能の一つ





彼は強くなった

素直にそう思う

今では、私を超えるほどに

それを嬉しく思う自分がいる



だが、そうそう簡単にやられるつもりも無い

彼が求めるものは今以上の力なのだから

強く睨み据える彼に呼応して

此方も視線に力を込めた






絡み合う視線は強さを増し

主でさえも踏み込み得ない

二人だけの空間を創り上げる





いざ

尋常に

勝負!










「今日もあんがとなー、鬼道ー」

「おー、夜叉丸にも伝えとくわ。力使い果たして出て来れへんみたいやし。
 ・・・・・・死なんよーに頑張ってや」

「おうっ!今日こそは、怪我無しで全員捕まえてみせるっ!」



言い放ち、意気揚揚と十二神将の下へ赴く横島だった。