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マコラ

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家を出た

特に理由は無い

強いて言うなら、見つかりたくなかったから










街の歩道を歩いている

人間の足音が響く中を

たった一人だけで



偽りの仮面を被った人間の群れ、私の傍を通り過ぎて行く

まるで水のよう、ではなかった

一掬いの記憶でさえも、私に残ることはない

まるで、触れる事も叶わない空気のように

通り過ぎた後は、痕跡もありはしない



社会で生きるために、隠している自分自身

嘘吐き達の集団

私と同じように



その中を

ただ、歩いている










銀杏並木を歩いている

静かな風が吹く中を

たった独りだけで



偽りの装飾を纏った私、装いの上に銀杏は降り掛かる

まるで雨のよう、ではなかった

降りしきり、足元に降り積もる銀杏は

まるで、黄金色に輝いている雪のように

秋の風に、優しく舞い続けている



人の世で生きるために、隠している自分自身

嘘吐きな道化師

人間と同じように



独りぼっちで

ただ、歩いている










進む先には、一人の男

突然、現れたようにも見えた

偽りに偽りを重ね、気にしていない振りを装い、ただ歩みを進める



傍を通り過ぎようとして

呼び止められる

私の、本当の名前で



気付かれた事を、悔しくは思う

それと同程度に、嬉しくも思う



得意そうな笑顔を浮かべている

あるがままに生きている

そうとしか見えない、この男





けれど





―――――――この男もまた

――――――――嘘をついているのかもしれない

―――――――――ただ、己の生を歩く為に





物思う、秋風の中で

それは、ふと浮んだ戯言












「ほい、見~つけた」

「もう、マコラちゃん~
 かくれんぼは、おうちの中だけよ~」