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おかしのおうち

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此処に、お菓子の家があるとしよう。


それはとても大きくて
それはとても美味しそうで
子供なら、一度は夢見る理想のおうち。


其処に少女は住んでいる。










少女はとても幸せだった。


だって、お菓子の家に住んでいるのだ。
ずっとずっと、夢見てきた。それが現実として此処にある。
その佇まいを眺めては、花のような笑顔を浮べ。
その香りを感じては、優しく視線を和らげて。
けれど、少女はそれだけで満足しない。
今も幸せではあるけれど、もっともっと幸せになるために。
少女は沢山頑張って、お菓子の家を大きくする。

お菓子はどんどん増えていく。

少女が集めて、増やしていく。










お菓子の家は大きくなって

少女の幸せが大きくなって










けれど今現在、少女は不幸の塊だった。


だって、蟻さんがやって来たのだ。群れをなして。
少女の頑張りを横から掠め取るハイエナども。
蟻さん達は、お菓子の家を削っていく。
やめてよ、やめてよ、と少女が言ってもお構いなしに。
ゆるして、ゆるして、と少女が泣いても聞いたりせずに。
たまに無機質な目を向けはしても、それ以外には意識を向けず。
どんどん小さくなって行くお菓子の家。
どんどん無くなっていく少女の夢。

たすけて、たすけて、と少女が泣いても助けは無く。
傍の誰もが顔を伏せ、傍の誰もが首を振り
何も出来ない自分へか、沈痛な表情をするばかり。
その間にも止まる事無く、壊れていくお菓子の家。
蟻さん達の手によって、崩れていくお菓子の家。
涙をどんなに流しても、お菓子の家は戻らない。










呆然と佇む少女。

随分と小さくなったお菓子の家。

随分と小さくなった少女の幸せ。


蟻さん達は、もう居ない。
仲間は何もしてくれなかった。
ただ哀しげに見詰めるばかり。
けれど少女は恨まない。恨む相手は別に在る。
少女の呪詛は蟻さん達へ。おのれにっくき国家の狗め。



悲しんだ末に、少女は決意を新たにした。
もっと大きなお菓子の家を作ってやる。
もっともっと大きな幸せを手にしてやる。
勿論、蟻さん達には気付かれないよう。
今度は取られてなるものか。

涙をキラリと輝かせ、お空の星を見上げながら。
少女は誓いの言葉を捧げたのだった。














「世の中・・・・・・・金よーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」














「てゆーか、まだ懲りて無いんですか」

「いっそ国税庁の人等が可哀相な気がするんですが」

「だって、お金が好きなんだもんっ!!!」



ザンスの一件が終わり、国税庁による追徴金の徴収があったその後で。
呆れた様に呟くおキヌと横島に、少女――――――美神は少女らしく喚いたのだった。